東京高等裁判所 昭和45年(ネ)1695号 判決
控訴人は被控訴人が振出を承諾したときはすでに受取人は控訴人名義に訂正されていたと主張するけれども、この点の主張にそう原審における控訴人本人尋問の結果は後記事情にてらして採用しえない。すなわち前掲証拠によれば被控訴人は衣笠の振出を承諾してその翌日みずから控訴人方に赴いて本件手形の所要個所に自己の印を押捺しているのであり、その個所は前記のとおり自己の名下、印紙及び控との接続部分であるのに、受取人名義の訂正部分には押印していないのであつて、もし当時すでに右部分が訂正されていたならばもちろん右個所にも押印したであろうと推認されるところから推して考えれば、その当時には訂正されていなかつたと認めるのが相当である。してみると被控訴人が承諾した手形の受取人は宮本和夫であつて、その後被控訴人の承諾なくして衣笠及び控訴人のみの合意で受取人を控訴人と訂正したのであるから、右部分に関しては被控訴人に対する関係においては変造したものといわなければならない。従つて被控訴人は変造前の記載に従い受取人宮本和夫に対し、振出人としての責任を負うことはあつても、変造後の受取人とされる控訴人に対しては、何らの責任を負うものではない。
(浅沼 岡本 田畑)